日本でもようやく性的少数者(LGBT)に対する理解が進展しつつある。LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害を含む心身の性別不一致)を意味している。
札幌市は6月からLGBTカップルの関係を公的に認証する「パートナーシップ制度」の導入に踏みきった。この制度は20歳以上を対象にして「日常生活において、経済的・物理的・精神的に協力し合うことを約束した、一方または双方が性的マイノリティーである関係」を公的にカップルと認めるものである。
同様の制度を全国に先駆けて2015年に導入したのは東京都世田谷区でこれまでに50組のカップルが宣誓を行っている。その後に東京都渋谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市が続き、札幌市が6番目に導入した。
これらのLGBTパートナーシップ制度は、自治体の要綱に基づく制度で法的効力がないために支援には限界があり、国会での明確な法的整備が求められている。しかし自治体がパートナーとして認定することによって、公営住宅への入居申請、病院での付き添い申請、死亡保険金の受取人指定などがスムーズに行われるようになっている。
日本では今後ますます少子高齢化が深刻化するために、各企業は多様な人材の確保のために「ダイバーシティ経営」を重視するようになっている。経済産業省は日本経済の持続的成長にとって「ダイバーシティ経営」が不可欠であることから、「新・ダイバーシティ経営企業100選」を行ったり、東京証券取引所と共同で女性活躍推進に優れた上場企業「なでしこ銘柄」の選定などを行っている。
欧米ではすでにLGBTに対する差別を撤廃して、LGBTが生き生きと活躍できる環境を整えている企業が増えている。日本でもようやくLGBTの権利に配慮する企業が出てきているが、欧米企業のようにLGBTを含めたダイバーシティ経営を積極的に取り入れている企業は少ない。
LGBTのシンボルは「レインボー(虹色)」と言われている。虹の色のような「性の多様性」を祝福する意味付けがあるとのこと。例えばLGBTへの理解を訴えるパレードは「レインボーマーチ」と呼ばれており、世界各地で行われている。
今後、観光分野でもLGBTへの配慮が必要になるので、観光企業はダイバーシティ経営の一環として率先してLGBTの受け入れを図ると共に、観光ダイバーシティの一環としてさまざまな形でLGBTに配慮した「レインボーツーリズム」の推進を図るべきであろう。
(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)